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TPPとは何なのか [tppはメリットがあるのか]

TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の議論がまた盛んになってきた。

オバマ政権は、日本のTPP参加受け入れに柔軟な姿勢を見せてきた。中国が世界経済を席巻し、軍事的恫喝を繰り返して膨張するのをけん制するためだという。

米国産牛肉の輸入制限緩和など前提条件を求めず、さらに農作物の関税撤廃も、経過措置を含めて実際の交渉で協議するとして、前提条件にはしない方針。

今がチャンスとばかりに推進派は活気づいている。米韓FTAを締結した韓国企業とは、関税がある分競争において不利になるとか、経済のグローバル化は世界の潮流であり、乗り遅れると日本は取り残されるなど。

TPPに参加することで日本企業の業績が上向きになり、農業も競争力を持つことが出来るなら誰も反対はしないだろう。しかし、そこに何らかの思惑が働いているのだとしたらどうだろうか。

〇推進派の論調

産経新聞正論1月6日、大田 弘子 政策研究大学院大学副学長(詳しくは記事を参照してほしい)

『日本経済の閉塞感が強まりつつある。それは・・・・・先々の展望が開けない事による。・・・・・韓国などアジア諸国は勢いよく変化しているのに、日本は取り残されている。

・・・・・なぜ変わることが出来ないのか。一言でいえば、変化を拒む力が強すぎるからだ。・・・・・スェーデンは高福祉の国として知られるが、高福祉を支えるために経済のグローバル化を全面的に受け入れ、そのための構造変化を正面から受け止めている。

・・・・グローバル化が必要だと分かっていても、農業団体が反対すると、FTAを結べない。保育サービスの拡充が必要だと分かっていても、保育園や幼稚園が反対すると両施設の統合が進められない。

・・・・民主党なら既得権を打ち破ってくれるだろう、と。しかし今までのところ、既得権はほとんど崩れていない。・・・・・しかし、「変われない日本」は必ずや衰退する。

・・・・この状況をどこから打破していけばいいか。私は、「グローバル経済に生きる覚悟」を決め、そのためにTPPへの交渉参加を一刻も早く表明することこそ突破口だと思う。

・・・・すでに相当遅れてしまったグローバル化への取り組みを挽回する絶好のチャンスであり、逆に参加できなかったときの代償はきわめて大きい。

今年は、TPPを突破口にして「変わることのできる日本」になろう。成長産業を生み出し、新たな雇用の場を作るための変化を起こそう。・・・・・・いまならまだ間に合う。

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下線を引いたところだけを改めて読んでほしい。まるで訪問販売のセールストークに聞こえてこないだろうか。或いはクラスの中で一人ぼっちになっている生徒に言い聞かせている先生の発言だとしたら。

孤立する、置いて行かれる、取り残される、今なら間に合う、という言葉に日本人は感情的に反応してしまう。そこをわざと突いてきているのではないか。

農業団体が反対するのはけしからんというが、既得権を守ろうとすることの何処が悪いのだろうか。彼らには彼らの生活があるのではないか。

グローバル化がバラ色の未来を約束してくれるのかどうかは、上のアジ演説とは別に考えなければならないだろう。

〇富岡幸一郎氏の解説によると

so-tv1月7日報道ワイドweekendの解説から(文責は筆者) 

大田氏の記事には、TPPをやるべきだとして、日本経済の困難を打開するためには積極策が必要であるとか、スェーデンを見習えとか、いろんなこと言っているが、TPPに関しては最後の一段くらいでグローバル経済を生きる覚悟を決めるためにTPPをやれと言っている。

つまりTPPの中身、何故こういう形でTPPが出てきたのか、TPPとは一体何であるのか、そしてTPPに参加すればどういう理由で日本経済が活性化するのか、というようなことがまったく論じられていない。

むしろ東谷さんのTPPはちょっと待て、という方が現実をとらえている。TPPにはアジアでは小さな国が入っている訳で、むしろこれはアメリカの輸出を伸ばしたいということで、オバマ大統領が5年間で輸出を倍増したいと言っており、その一つの大きな突破口としてTPPを考えている。

そしてアメリカの輸出、農産物等を大きく輸入できる国は日本しかない。関税が無くなってアメリカへの輸出が増えるというよりは、アメリカは為替相場でドル安に誘導してきますから、日本の輸出は存外伸びない、アメリカの農産物が大量に日本を席巻していく、それが構造的な日米間の食料の構造になる。

日本は農業の立て直しを言っているが、実は恒常的にアメリカに農産物を依存する構造になります。そういう意味でTPPというのは、日本国内の農業問題というより、むしろ対アメリカの問題、

つまりアメリカが日本の市場を開放しろとずっと言ってきた85年プラザ合意、80年代後半の日米構造協議、そして92年の年次改革要望書、それによって郵政民営化がなされ、郵貯と簡保の巨大な金が流れ出たという、アメリカの一貫した日本市場開放政策、

この流れの中にTPPは位置付けられているといえる。

この意味では、TPPによって国を開くというのは良いイメージがありますが、じつは、開国することが亡国につながる恐れもある。

東谷さんの記事によれば、TPPの対象になるのは、実は農業だけではないという。

アメリカはWTOにおいてもサービスの貿易に関する一般協定(GATS)に力を入れて金融、医療、法律といった分野のサービスの輸出を熱心に追求してきた。それは米国が締結してきたFTAや地域協定を見ても明らかだという。

つまり日本の市場が完全にアメリカに席巻されていくということ。拙速にTPPに参加すれば農業だけではなく金融、医療、法律などのサービスに、意に反して輸入増加せざるを得なくなるのではないか、ということです。

TPPはアメリカの中・長期的な戦略である。

(東谷 暁氏はジャーナリスト:産経正論1月5日)

〇グローバル化は日本にとって本当に利益になるのか

グローバリゼーションというのは、日本人にとって抗えない潮流で、必ず実行しなければならない課題のようにいわれているが、実はアメリカや欧州にとって都合のよい方便として使っているにすぎない。

自国にとって価格的に有利で、国益に適う限りにおいてのみ、グローバリゼーションの旗を掲げ、相手国の関税を撤廃させようとしている。EUはアメリカの遺伝子組み換え穀物を輸入していない。

日本の農業を開放して生き残れるのは、ほんの一握りの大規模経営だけであろう。関東などの平野部はまだ可能性はあるが、日本の国土の大半である山林に作られた棚田は大規模経営に向かず、もともと生産性に乏しい。

これらの棚田が治山治水に役立っていることも忘れてはならないだろう。間伐がなされない山林の土砂崩れなど、崩落現象が後を絶たない現実をどう考えるのだろうか。

さらに、日本人の食糧を他国に依存するようになってしまえばどうなるのか。いつまでも安い価格で手に入るとは限らない。日本の農業が壊滅した後に訪れるのは、穀物メジャーによる価格コントロールではないのか。

新年早々、小麦と大豆の価格高騰を伝えるニュースが入っている。中国など新興国の旺盛な需要に加え、米国の大規模金融緩和で膨らんだ投機マネーが商品市場に流れ込んでいるためだという。

穀物は投機の対象にもなっているだけに、今後を的確に見据えた分析が必要だと思うがどうだろうか。


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コメント 1

cargo

1件コメントを頂いたが、後半の表現が気に入らなかったので削除しました。ベトナムから安い労働力とか、ガバナンスの問題だとか言うけれども、問題は日本人にとって、もっと大きなことであると思いますよ。TPPは数ヶ国間の協定ですが、これ以上のグローバリゼーションによって、日本の風景や国のかたちなどが大きく変わっていくことが問題だと思いますが。推進派がいうように、国を開かなければならないのではなくて、すでに日本は開かれているのですから。
by cargo (2011-01-18 10:42) 

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