後ろのコンテナが・・・・ [事故防止]
後ろのコンテナを落としていく人がいる。
数はそれほど多くはないものの、今だにというか、私がトラックに乗り始めた頃の、25~26年前から落としていく人はいたのだ。
電車や高架道路のガードに激突して、元の形がどうだったか分からないような変形の仕方。
ぶつかった個所が抉れている。
事故現場が派手なためか、後々まで語り継がれることになる。
哀れ無惨。本人もビックリするだろうが、これではコンテナが可哀想だ。
☆
私はガードに差し掛かって、目の前に2.9とか3.0の表示を見るたびにドキッとする。
今はトラックに乗っていないのに、以前の習慣になっているのだろうか。
ここの高さは何メートルだろう、とそっちの方に目が行ってしまう。
当時、地図を見ながら都内を数十件ほど配送していたことがあり、度々エリアを変えられた。
当然、初めてその場所を走ることになり、右も左も分からない中、地図だけが頼り。
同僚で知っている人に聞いていくが、件数が多いために全部は無理。
狭い路地やら、車が止まっていて抜けられないような所、商店街で軒先やテントが突き出ていることろ、重量制限3tで入れないところ、など沢山あった。
今でも覚えているのが、あの自由が丘の電車のガード。
地図を見ながら交差点を右折して、電車を超えた先に得意先がある(踏切だと思った)。
もうすぐだと思いながら、対向車をやり過ごして右折していく、と、目の前に現れたのが道路を跨いで大きく見えるガード。
少し距離があるので、どのくらいの高さか分からない。進んでいくと、だんだん不安になってきた。そして見えてきたのが2.5(2.7かも)の表示。
おお、ここまで来るともう逃げる道がない。ガードの横に側道はあるが、とても狭くて曲がれる幅がないのだ。どうするか?
そうする間にも後ろから車がやってくる。自家用車は楽に抜けられるのだ。
クソ!こんなところに低いガードを作りやがって、と思いながら、怒りが込み上げてくる。
もうこれしかない、と思って実行したのがそのまま対向車線に移って、バックで戻ること。
但しバックモニターなどなかったから、後ろは見えない。もちろんコンテナだから振り向いても見えない。
運転席のドアを開けてそのままバック。後ろから車が来るので、その度に止まってやり過ごす。そしてまたバック。
その先はさっきの交差点だ。バックのまま赤信号を待って、青になった。
対向車がいなくなるのを待つ。交差点の反対側まで下がって、ようやく方向転換。
その間200メートル位だと思う。
もう汗びっしょりで、おおー良かった。
地図だけを頼りに入って行くと、こういうことになる。
尚、このような時は非常事態である。
周りが大騒ぎして、心がパニックになることがあるかも知れないが、ここには自分しかいないのである。
自分の車をぶつけないために、取り得る最善の方法を選ばなければならない。
場合によっては、他の車を止めてでも、通行止めにしてでも、安全を確保しなければならない。
だからこの時だけは、自分が優先だと思って構わない。
ドライバーには、太い神経が必要である。
あとで、お詫びしておけばそれで済むことである。
この話は今から10数年前のことだから、今はどうなっているか分からない。都内はトラックが通れないところが多い。
☆
ビルの地下駐車場、これもドキッとする。
高さ2.8や2.9なら入れないが、3.1だとギリギリセーフ。
都内の地下駐車場は、低床でないと入れないところが多い。
しかし、上の蛍光灯や配管にくっつきそうだ。いくらも隙間がない。
あなたは自分の車の車高を知っているだろうか。
場合によっては入り口に高さ表示がなく、守衛さんがいないところもある。聞きようがないのだ。
トラックが何台か入っているといっても、自分の車が入れるとは限らない。
スロープになっているところをソロソロと進み、上から吊るしてある高さ制限板のところで一旦止まり、上を見上げる。何とか大丈夫そうだ。
よく見ると、上に擦った跡が付いていることがある。
気が付かずに入ろうとしたのだろうか。これはひどい。
以前新宿にあった某物流センターは、地下駐車場が納品所になっていた。
驚くことに、その地下スペースは場所によって高さが違うのである。
この時は車高が2.9の低床車だった。
入口から入って中央部分は3メートルまでOK。しかしプラットホームがある端の部分は低くて上がぶつかってしまう。
どうにも気が気でない。移動してくれといわれても、上が気になって。
気持ちよく伸び伸びと、仕事が出来る感じではなかったようだ。
☆
ビルの地下駐車場にしても電車のガードにしても、建物のひさしでも、上にあるものは、ぶつけてしまうと損害賠償の金額が高くつく。
それも100万や200万では済まない。500万とか、1000万という賠償事例もあるのだ。何故かというと、それだけ手間と作業が余計にかかるため。
『うっかりしてました』では済まない。
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