事故防止から見た事業所の違い [事故防止]
それぞれの事業所によって事故防止の方法は様々ですが、特にこれは、というものがありますのでご紹介します。
『事故多発事業所』という言葉を御存知ですか?他の事業所(会社)と比べて明らかに事故の発生件数が多いのです。当てたり、擦ったり程度の軽微なものから、人身事故、重大事故に及ぶものまで多岐にわたります。
交通事故を起こすのは、普通に考えるとドライバー個人ですが、特定の事業所ばかりに事故が集中して起こっているケースがあります。これは何かの理由があって事故が集中していると考えた方が良さそうです。
事故多発事業所の特徴を以下に挙げておきます。
①人が定着しない、絶えず入れ替わっている。
②そのため恒常的に人手不足で、ドライバーが休日返上で過剰労働を強いられる。
③経営者とドライバーの間で意思疎通が見られない、またはトップダウンプロセスばかりで下からのボトムアッププロセスが見られない。会社としての一体感が失われている。何かいっても受け付けない、いやなら辞めろ方式。
④管理者や運行管理者がドライバーに無関心。人数が足りていれば良いと思っている。休憩を取れているか、疲労の状態にも関心がない。寝不足を訴えてもそのまま乗務させる。管理者、運行管理者の能力不足(ドライバー出身で管理能力があるとは限らない)。
⑤その結果ドライバー同士の仲が悪く、助け合いの行動が見られないばかりか、喧嘩や争い事が良く起こる。
⑥スピード違反や急な割り込み、他の車に幅寄せするなど乱暴運転で有名となる。
⑦整備不良の車両をそのまま使用する。ラッシングベルトなど備品が壊れた時もドライバーの責任にする。
⑧事故が起こるたびに社長は檄を飛ばすが、ドライバーからのフィードバックを得ていないため、何をどうすれば良いか皆目見当がつかない。
⑨事故防止は常に上からの押し付け、今日の標語は当たり前の事ばかり書き連ねる。命令することで事故防止が出来ると思っている。
これらのものは、法令違反を含んでいます。
なるほど、優秀なドライバーでもこんな所に入ったら、事故を起こすようになる訳です。
『貨物自動車運送事業法』及び『輸送安全規則』をもう一度よく読んでください。
運行管理者の問題が大きい理由
点呼に当たって、まずはアルコールチェックと免許証提示をしますが、これで点呼終了としてしまう事業所があります。これだけで終わりなんですね。所によっては免許証も確認しません。アルコールチェックの機械だけ置いておけば良いというのはお手軽ですね。
次に少しマシな例ですが、運行管理者が机に座ったままドライバーに背を向け『〇〇さん、体調はどうですか?』と訊きます。『疲れています』とか『風邪をひいてます』というと、それを書き込むだけです。それ以外何もしません。これが運行管理者の仕事なのでしょうか?
別の事業所では点呼で対面しますが、車のキーとETCカード、デジタコカードを手渡し今日は〇〇の配送ですからここへ行ってください。とそれだけです。運行管理者でなくても出来ることですね。
さらに別の事業所では、運行管理者自体が事務所にいません。勝手にアルコールチェックをして車のキーとETCカードを取り、事務所を出て行きます。信じられないかも知れませんが、本当です。
上の例から言えることは、管理者の皆さんならすでに分かっていることですが、『事故防止の視点が完全に欠落している』という事です。
これから会社の車を運転して出発する者に対して、事故防止の働きかけが何もないのです。
『忙しいからそんなのやっていられない』というのなら、さっさと廃業してもらった方が良いですね。
何故なら『輸送の安全性向上』こそが第一優先だからです。
『貨物自動車運送事業法』及び『輸送安全規則』をもう一度よく読んでください。
運行管理者や統括運行管理者には、まずドライバーに対して事故防止の働きかけが出来なくてはなりません。
事故防止の雰囲気作りが出来ますか?
あなたが『おはようございます』と事務所に入って行ったとき、誰も応答しないで無視されたら、今日も安全運転しようと思いますか?
業務上の問題があって聞いてもらいたいのに、耳を貸してくれない会社で頑張ろうと思いますか?
人は理屈や標語や知識が分かったところで行動に移しません。
日々の事ですから尚更マンネリ化しやすくなります。
ではどうするのか?
ある会社の例をひとつだけ紹介します。優れた管理者の方だと思います。
業務を終えて無線連絡を入れると、『〇〇さん、お疲れ様でした。くれぐれも無事で会社までお帰りください』とゆっくり、心を込めて言うのです。
言われた人はどう感じるでしょうか?
『そうだ、やっぱり事故は起こせない』と思う人が大半だと思います。
人の行動を変えるのは理屈や命令ではありません。
コメント 0