この人の処遇をどうするか1 [事故防止]
インターネットでヒントを頂きましたので、今回はこのテーマで話してみたいと思います。
『この人の処遇をどうするか』というのは、実は顧客から度々聞かれることでもあります。
事故を繰り返し起こしたドライバーに、管理者としてどう対応すればいいのかということです。
ここで大事なことは、引き起こした事故の程度と、本人がそれをどう受け止めているかの問題。
もうひとつは会社や管理者にとって、もう一度チャンスを与えようと思える人かどうかです。
以下の記述は、会社として安全確保義務を満たしていること、無理な労働条件を課していないことを前提にお話します。
☆
免許さえあれば誰でも運転できる時代ですから、個々人の安全に関する認識の違いに幅があることは否定できません。
制限速度を守って走れば事故はないと言う人から、絶えず周囲に注意を払い、運転中は気を抜かない、という人まで様々です。
ですから指導の方法は一様ではなく、『如何に本人に気が付いてもらえるか』にかかってくるわけです。具体的には、自分のどのような運転行動が事故を起こすに至ったのか、ということを理解してもらわなければなりません。
_
免許を持っていれば誰でも運転することは出来ますが、事故を起こさずに運転することは、相当な経験と努力と自分の運転に対する洞察を必要とします。
どのような時に注意が疎かになるか、イライラしたり焦りの気持が出たり、やる気をなくすとどうなるか、というようなことを講習の知識ではなく、自分の体験として知っている必要があります。
このような人がプロドライバーであり、時に危険な体験をした後は、同じことを繰り返さないよう慎重に運転を切り替えることが出来る人であると私は思います。
☆
例えば追突事故を1年に2回起こした人がいるとしましょう。
1回目は厳重注意で反省文を書かせる、始末書を書かせるなどのことをしている会社が多いでしょうが、この人は2回目の追突事故を起こしました。
前回の反省は何だったのか、ということになるでしょう。
管理者として具体的な指導をして、本人も反省しているということで、再び乗務させることにしたわけですが、しばらく経つとまた事故を起こしました。
車間距離を取っていない、発見が遅れた、いきなり止まられて対処できない、急に入って来られた、など状況は様々ですが
本人は事故がなぜ起きたのか分かっているでしょうか。
前回の事故を教訓に、具体的な安全行動を取っていたのでしょうか。
☆
事故を起こしたらひとまず降ろす
人身事故になった時は少なくとも1週間、物損でも2~3日は、乗務から外した方が良いと思います。その余裕がないという場合でも、同じ期間管理者が同行して運転をチェックするなどの対応は必要です。
忙しい日常業務から離れて、冷静さを取り戻すため、落ち着いて事故が起きた状況を考える、事故を起こすことの重大性を理解してもらうためです。
会社によっては数カ月間、地上の物流センター業務に就かせるところがあるくらいです。
☆
怒らない管理者ではダメ。
『この会社の重要な戦力として働いてもらっているのに、プロであるあなたが何故事故を起こすのか』、ときっぱり言うことから始まります。
間違っても『事故を起こしてくれといったことはない』、『他に代わりはいくらでもいる』、などといってはいけません。気持ちは分かりますが、反発するだけで逆効果です。
逆にまあまあ、『間違いは誰にでもあることだから、今度からは気を付けて運転してくれ』などと今回の件をこれで終わりにするような言い方には賛成できません。
本人にとってせっかく自分の運転に気づく機会を奪ってしまうことになるからです。
もちろん会社である限り利益を出さないとやってはいけませんから、今回の事故が会社にどのような損失を与えているのかということを言って頂きたいと思います。
金銭的損失、信用損失、運送会社の法的社会的責任、そして被害者がいるなら相手を思いやること。
☆何故事故が起きたのかを本人から聞く
とは言っても、これ以上事故を起こして人を傷つけないために、本人には違う業界に行ってもらった方が良いという場合もあります。
何度事故を起こしても反省がない
軽い事故だからいいと思う人
相手が怪我をしているのに思い遣れない
自分のことばかり心配する
このような人は運転を職業とするには不向きだと思います。
事故を起こしたことをどう思っているのか聞いてみて、何も返ってこない。
運転にも変化がないということなら、さらに事故を起こす可能性が高いです。
☆
もうひとつは事故の原因を誰のせいにするかということです。
たまたま運が悪かった、ついてなかった
急に止まったのだから相手が悪い
もしこの車がいなかったら事故は起きてない
こういう人がある程度いるのも事実です。
特に事故の大きさから、自分で抱えきれない精神的な重圧を感じている場合には、そちらの方に気持が引っ張られることがあります。
人間として自然な反応でもあります。管理者はゆっくり話を聞いてあげてほしいと思います。思いつめているようなら外部の専門家に相談を。
ただし、それほど重大事故でもないのに責任逃れで上のようなことを言う人は、問答無用です。
毅然とした態度で、『反省と今後の対策がない者を乗務させる訳にはいかない』というべきでしょう。
☆
『これからどんな運転をするの?』と聞いた時に
『もっと一生懸命に運転する』とか、『しっかり運転する』とか、『もっと注意する』、『もっと見る』、などと答える人です。
精神論で緊張感を高めるという意味では必要なことですが、自分の運転に対する洞察としては不十分です。
何をしっかりするのか、何をどのように注意するのか、が本人にも分かっていないために、このような答えしか返ってきません。
管理者が指摘したり、教えてはいけません。誰よりも本人が一番よく知っているはずだからです。
具体的に『自分はこういう状況で、こういうことが欠けていた(または出来なかった)ために事故になった。これからは事故にならないためにこういうことをする。』
より具体的なものが出てくるまで、一生懸命に考えてほしいことです。
自分で気がつくことが出来れば、この人は将来、皆の手本となるほどの優れたドライバーになれると思います。
感想、ご質問等お待ちしています。
コメント 0